。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




それが一結との出会い。



後に聞かされる―――彼女が実の父親に対する憎しみ。


母を捨て子を捨て、のうのうと青龍会幹部に居座っているあの男に対する憎しみ。


その復讐心を煽って増幅させたのはこの私。


私は鴇田に個人的恨みなど露ほどもなかった。けれど殺しを請け負ったのは


面白そうだったから。


彼女の一言が気に入ったから。



そう


私には単なる娯楽にしか過ぎない。





「殺して。鴇田を殺して―――



全員殺して。青龍なんて無くなっちゃえばいい」







御意




私は即座に答えた。


新しい主である―――我儘で高飛車なお姫様に―――誓った。


必ず殺してあげるよ?


君に鴇田の首をプレゼントしてあげよう。


――――

――


それから一か月、私たちはことあるごとに一緒に居た。


気が合うこともそうじゃないことも多々あった。


気が強い彼女の反応が面白くて、私がからかって彼女で遊んでいたときでさえも、


「愛なんてまやかしよ」


実の父親に捨てられた、と思って居た彼女の口癖を知り、常に愛情に飢えていた。


「恋なんて絶対しない」と誓っていた彼女の傍に居て


けれどやがてその誓いが破られたときも……


響輔を想い、彼女はたくさん泣いたり笑ったり


私はずっとその傍に居て彼女の心の変化を感じ取っていた。


イチの響輔を想う気持ちは私にとってまるで「恋愛ごっこ」をしているようで可愛らしかったが


その全部全部―――


どれもが今思い出すと―――私にとってかけがえのないものであり、


同時に大切にしたいと思う。


一結の笑顔を思い出すと胸がざわつく


一結の涙を思い浮かべると、今すぐにでも抱きしめてやりたいと思う。


傍に居たいと思う。





君がもう泣かなくていいように。



君が寂しくないように―――






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