【完】終わらないラブストーリー






次の日からさっそく練習が始まった。

台本はすぐに美紀が用意してくれたから心配ない。



心配なのはさっきから隣でもじもじしている佐藤君と上手くやっていけるかどうか。



全体的に暗いオーラの佐藤君。
メガネかけてて、前髪伸び放題。
どこからどう見てもロミオって役は似合わない人だと誰もが思ってる。



…昨日美紀にも配役失敗したかもって言われちゃったし。



本当、大丈夫かなぁ?









「じゃあ…とりあえず佐藤君。線が引いてあるセリフ喋ってみてくれるかな?」


演出の美紀が指示する。

佐藤君は慌てて台本を開き、震える手つきで線を探し始めた。



役者の皆も心配そうに佐藤君を見守る。





美紀の合図で佐藤君はセリフを言いだした。


さっきまでのもじもじしていた人はどこに行ったのか…。



そこにはロミオがいた。



『お言葉通りに頂戴いたしましょう。ただ一言、僕を恋人と呼んでください。さすれば新しく生まれ変わったも同然、今日からはもう、ロミオではなくなります』




役者全員がほうっと息を吐いた。

すごく甘い声。


「いい…!!すごくいいよ佐藤君!!」


我に返った美紀が佐藤君の肩を持ち揺する。


「…ほ、本当ですか?嬉しいです…!!!」


「茉莉亜も!!ほら!!」


こうして私たちの練習は始まった。
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