桜縁
無理矢理取ってつけたような感じであったが、芹沢の悪評は隊士達の間でも有名になっており、病死がせめてもの幸いといった感じで、誰もその死に疑いを持たなかった。
翌週には八木邸で牛詰めにされていた隊士達が移動してきて、八木邸は宿舎として扱われるようになった。
そんな中、総長であった山南が大阪で負傷するという事態が起こり、左腕が麻痺して刀が握れなくなるという後遺症を残してしまった。
一緒にいた土方は自責の念を抱え、山南は隊務から外れるようになってしまう。
月は土方に願い出て、山崎と共にありとあらゆる薬の研究を行うが、以前として後遺症を治す方法は見つからなかった。
そして、また新たな波が新撰組を飲み込もうとしていた。
長年、戦争をし対立を深めていた薩摩藩と長州藩がある時をきっかけに、一線を退き互いの間で会合を開くようになっていた。
どうやら裏で誰かが動いているようだ。
そのため、幕府は薩摩と長州への警戒をするよう会津藩に命令を下した。
そして、それは町を警護する新撰組の耳にも入り、新撰組も昼夜の巡察を強化するようになっていた。
そんなおり、新たな知らせが舞い込んでくる。
「なに!長州の過激派が京に潜伏しているだと!?」
「はい。奴らは長州藩邸の近くの宿屋で頻繁に会合を開いているようです。」
長州の過激派と言えば、長州藩主である高杉や、重役である桂達の下にいる、【吉田麿】率いる浪士集団だ。
今まで何度か密偵として、新撰組から幹部や監察型を送り、その動向を探らせてきたから間違いはない。
「これは厄介な事ですね。今まで長州の高杉一派が押さえて来た奴らが、京まで来たとなると、長州が何らかの企みを持ってる可能性があります。」
「奴らをあえて、野放しにしたってっか?」
「おそらくそういうことでしょう。今まで戦争をしていた薩摩や長州が、互いの藩で会合を開いたりしているのですから、彼ら何らかの目的を持ち、京へ来た可能性があります。」
珍しく顔を出していた山南の言う。
確かにその可能性が高い。だが、その目的は不明である。
京で奴らが動き出す前に、彼らの目的を探り出さなければならない。
「山崎、奴らの潜伏先は何処だ?」
「角屋です。奴らはそこで会合をしており、そこの宿屋の主である【古高】も、過激派に加わっているようです。」