桜縁




「なるほど、それは奴らには都合のいい隠れ家だな。引き続き、奴らの動向を探れ。」


「はい。」


山崎は引き続き調査をするため、部屋から出て行った。


「……彼らが別の目的のために来たと考えですか?」


山崎が出て行っても難しい顔をしている土方に尋ねる。


「元々、会津と長州は兄弟藩だ。あの一件で長州を怒るのは当然だろ。」


長州はあの一件で会津という利用価値のある藩を失った。


しかも豪族まで巻き込んでいる。それには沖田や月も関わっている。


会津への裏切りで長州が過激派を出した可能性もある。


それはきっかけかもしれないが、どちらにしろ長州の恨みを買ったには他ない。


「確かに、あの一件には高杉の娘も関わっていますしね。」


「どっちにしろ、このまま見過ごすわけにはいかねぇ。なんとかして奴らの目的を暴いてやる。」


恨みを買ったにしろ新撰組は、京を守らなければならないのだ。








後日、土方は幹部達を広間に集め、事の次第を報告する。


「長州の過激派が京に潜伏してるだって!?」


「ああ、奴らの目的が分からない以上、俺達も迂闊に動くわけにはいかねぇが、このまま黙っているわけにもいかねぇ。なんとかそれを知る方法を探ってみた。」


「で、どんな方法を使うんだよ?」


「奴らは近々、宴会を開く。そこで、潜入して奴らの動向を探るんだ。」


監察型を出しても、尻尾を出さないのなら、こちらが動くまでだ。うかうかしていたら、奴らの思う坪だ。


「で、それに誰が行くんだ?」


「月。お前だ。」


「え?」


「ち、ちょっと待てよ、土方さん!月にそんなことさせていいのかよ!?」


「ま、それもそうだな。」


「左之さん!!」


「俺達が角屋に潜入して派手にやったら、それこそ奴らの思う坪だ。それに、月ならやってくれるさ。美人だし、奴らにはバレないだろう。」


幸いにして月は過激派とは面識もなく、芹沢の一件で手柄も立てている。


適任と言えば適任だ。


「……わかりました。私、やります。」


「月!!」


上手く出来る保証はないが、宴会とかなら場慣れをしている。探りを入れるぐらないならお手の物だ。


それに、新撰組の役に立てるのなら、長州を敵に回してもいいと考えていた。


「着物はこの間のを着て行け。まだ使えるだろ?」


「はい。」


「でもさ…。」
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