桜縁
彼女の部屋へ行き、やめるよう言おうとしたのだが、関係ないと言って目も合わせてくれなかったことが辛くて、無理矢理あんなことをしてしまったのだ。
一方で、月は任務を果たすために、浪士達の様子を伺っていた。
すると、運がいいことに、近くの浪士達がボソボソと何か言いあっているのを耳にする。
どうやら、例の目的についてらしい。
月は聞き逃さまいとして、聞き耳を立てていた。
すると、隣に座っていた浪士が、擦り寄って来た。相当飲んでいて、デロデロに酔っている。
「よう、姉ちゃん。色っぽい顔してんな?旦那とかいんのか?」
「い、いえ…。」
あんたに構ってる場合ではないんです!
そう叫びたがったが、そうはいかない。
男と話しをしながら、ちゃんと重要なことは聞き逃さまいとした。
「なら、俺の妾けになるってんのはどうだ?不自由はさせんぞ?」
「いえ、間に合ってますので、結構です。………っ!?」
月の耳にボソボソと話す男達の話しの内容を耳にする。
……にわかに、信じ難い話しだが、情報収集にしては充分だろ。
すると、不意に男が月の肩に手を回し、自分の方へと引き寄せてきた。
「!?」
「遠慮するな!今晩は俺の相手をしてもらおうかな~。」
男はニヤニヤとしながら、月の懐へと手を忍ばせてきた。
「!!」
「ええ身体付きしとるのう~。」
「!?」
胸の膨らみをいやらしく撫で回す男。さらに逆の手で、着物の帯を緩めはじめる。
慌てて周りを見ると、あっちでもこっちでも、そんな雰囲気になってしまい、なやましい声が響く。
いくら月が芸妓でもこれには耐えることが出来ない。
「さあ、俺達もはじめようか?」
男が月に手を回したその瞬間に、近くの部屋でゴトリと物音がした。
「ん?」
男が音に反応する。すかさず、月はその手を払い退ける。
「いやですね~。お隣りのお客様も酔ってるみたいですね。少し様子を見て来ます。」
「あ、ちょっと待て。」
「ではごゆっくり。」
月は立ち上がり、にこりと笑って早足に部屋を出て行く。
月は急いで物音がしたであろう元凶の部屋の前で足を止める。
辺りを確認し、部屋の襖を開けて中へと入る。
中では今にも抜刀しそうな沖田が、斎藤に取り押さえられていた。