桜縁





彼女の部屋へ行き、やめるよう言おうとしたのだが、関係ないと言って目も合わせてくれなかったことが辛くて、無理矢理あんなことをしてしまったのだ。







一方で、月は任務を果たすために、浪士達の様子を伺っていた。


すると、運がいいことに、近くの浪士達がボソボソと何か言いあっているのを耳にする。


どうやら、例の目的についてらしい。


月は聞き逃さまいとして、聞き耳を立てていた。


すると、隣に座っていた浪士が、擦り寄って来た。相当飲んでいて、デロデロに酔っている。


「よう、姉ちゃん。色っぽい顔してんな?旦那とかいんのか?」


「い、いえ…。」


あんたに構ってる場合ではないんです!


そう叫びたがったが、そうはいかない。


男と話しをしながら、ちゃんと重要なことは聞き逃さまいとした。


「なら、俺の妾けになるってんのはどうだ?不自由はさせんぞ?」


「いえ、間に合ってますので、結構です。………っ!?」


月の耳にボソボソと話す男達の話しの内容を耳にする。


……にわかに、信じ難い話しだが、情報収集にしては充分だろ。


すると、不意に男が月の肩に手を回し、自分の方へと引き寄せてきた。


「!?」


「遠慮するな!今晩は俺の相手をしてもらおうかな~。」


男はニヤニヤとしながら、月の懐へと手を忍ばせてきた。


「!!」


「ええ身体付きしとるのう~。」


「!?」


胸の膨らみをいやらしく撫で回す男。さらに逆の手で、着物の帯を緩めはじめる。


慌てて周りを見ると、あっちでもこっちでも、そんな雰囲気になってしまい、なやましい声が響く。


いくら月が芸妓でもこれには耐えることが出来ない。


「さあ、俺達もはじめようか?」


男が月に手を回したその瞬間に、近くの部屋でゴトリと物音がした。


「ん?」


男が音に反応する。すかさず、月はその手を払い退ける。


「いやですね~。お隣りのお客様も酔ってるみたいですね。少し様子を見て来ます。」


「あ、ちょっと待て。」


「ではごゆっくり。」


月は立ち上がり、にこりと笑って早足に部屋を出て行く。







月は急いで物音がしたであろう元凶の部屋の前で足を止める。


辺りを確認し、部屋の襖を開けて中へと入る。


中では今にも抜刀しそうな沖田が、斎藤に取り押さえられていた。


< 129 / 201 >

この作品をシェア

pagetop