桜縁
「ならば、無理矢理にでも調達するまでだ。」
「で、ですが……!」
無理矢理にやってしまえば、新撰組に見つかり、計画が失敗に終わってしまう。
だが、吉田は顔色一つ変えずに、古高に命令を下す。
「計画のためだ。今夜中に武器と弾薬の調達を完了しろ。いいな?」
「は、はい…。」
計画を果たすには何としても、調達しなければならい。かなり危ない賭けではあるが、吉田は壬生狼に負ける気はしなかった。
後日、その吉田の思惑は沖田と月によって覆されることになる。
沖田と月はあれから、当たらず触らずといった感じで、別に恋仲という関係ではなかった。
しかし、気になる。
横を歩く沖田をちらりと見上げる。
以前から気になってはいたが、沖田は自分とは違う想いを求めていると思い、自分の気持ちを封印してきた。
もちろんそれまでにいろいろなことがあり、今更という感じでもあったが、今は違う。
想いが重なりつつあるのだ。
そう思うと、沖田が隣にいるというだけで、妙に意識してしまう。
「………月ちゃん。」
「は、はい。」
「そんなにあからさまに避けなくてもいいんじゃない?」
「えっ?」
「…………。」
ジット月を見る沖田。そこには妙な間が空いていた。
「あ……。」
いつの間にか、距離をつくっていたようだ。すぐに月は沖田の側へと寄る。
でも、妙に緊張してしまって顔があげられない。
「……そんな風にされると、いくら僕でも傷つくんだけど? 君が薬剤を買いに行きたいって言うから、わざわざ同行を許したのに。」
「す、すみません…。」
「……ねぇ。」
「きゃあっっ!!」
思わず驚いた月が後ろに飛びのく。沖田が近距離で顔を覗き込んだためだった。
これではあからさまに避けてます!というのが丸出しだ。
「そんなに驚かなくても…。」
「あ、その……。」
言い訳しようにも、口ごもってしまい上手い言葉が出てこない。
「まあ、いいけど。あんまり遅れないでよ。」
沖田は何でもないかのように、先に行ってしまう。月もその後ろを追いかけた。
沖田に変わったところがないのに、妙に意識してしまって馬鹿みたいだ。
そんなことを悶々と考えているうちに、目的地へと辿り着く。
ここからは沖田達の組とは別行動だ。