桜縁
「いくら女でも、許せねぇな。」
「せっかく、命だけは助けてやろうと思ったのに、残念だ。」
「!」
男達は次々に刀を抜き、月へと迫る。
「死ね 女。」
「やあーーー!!」
「!」
一人の浪士が斬りかかってくる。月はとっさに抜刀し、浪士を斬りつける。
「この女!」
月は浪士達に刀を構え、攻撃してくる浪士達を次々に討ち取っていく。
絶対に死ぬわけにはいなかい。
なんとしてでも、この情報を新撰組に伝え、この京を守らなければならないのだ。
月と浪士の力の差では圧倒的に浪士が上だが、剣の実力の差では月の方が遥かに上だった。
次々に襲いかかってくる敵を、たった一人で斬りつけていく月。
血の飛沫が上がり、地面が血の海となる。
「くっそ! 化け物か…!」
女に負けるのが悔しくて仕方がないのか、そんな捨て台詞を吐く浪士達。
「うわっっーーー!!」
「!?」
月から殺されたはずの浪士が急に起き上がり、月を目掛けて突っ込んでくる。
「あっ!!」
ーーーグサッ!
避け切れずに刀が月の肉体へと食い込んだ。
「うっ……!!」
月はそれを勢いよく引き抜き、刺した浪士を斬り殺した。
ポタポタと鮮血が流れ落ちる。
ここぞばかりに、浪士が刀を振り上げた。
だが、月にはもう避けきれる力がない。
振り上げられた刃が太陽で光る。
「…………!」
死を覚悟し、その振り上げられた刃を見つめていると、突如、浪士が奇声を上げた。
「………?」
浪士が倒れると周りにいた浪士達も次々に、血の飛沫を上げながら地面へと倒れた。
なにが起こったのか一瞬分からなかったが、その姿を見てすぐに理解が出来た。
「月ちゃん!!」
すぐに駆け寄って来たのは、永倉だった。
「酷い出血だ!すぐに屯所へ連絡しろ!」
辺りで隊士達が慌ただしく動き出す。
永倉が手当てをしてくれるがその声も、辺りに響く隊士達の声も、今の月には届いていなかった。
朦朧とした意識の中で見つめていたのは、一番に駆け付けて来て助けたであろう、沖田の姿であった。
沖田と月は周りとは関係なしに、お互いを見つめ合い続けていた。
沖田が手にしていた刃から、血がポタポタと落ちていた……。
月はすぐに屯所へと運び込まれ、すぐに山崎の治療を受けた。