桜縁
だが、どんなに見渡しても、史朗の姿は何処にもなかった……。
「兄さん……。」
留めたく涙が溢れてくる。
いつまで待っても、史朗は来ない。
その事実が重くのしかかって来る。
すると、砂を踏む人の気配を感じる。
月は慌てて刀を構え、物陰から様子を伺う。
史朗ならいいが、敵だったら大変なことだ。斬る覚悟を決め、奮える手を押さえ込む。
「……君、そんなところで何してるの。」
「!!」
一気にすらりと月の刀が抜き放たれる。
それをひらりと交わされる。
ハラハラと散る桜の花びらが、まるで雪のように二人の間に舞い散る。
これが沖田と月の出会いだった……。