桜縁





そして、その内容は幕府側に対する明らかな敵対行動であった。


「なんだって!?御所を襲撃して、京の町を焼き払うだって!?」


「長州の奴ら何考えてんだ!?」


広間に集まっていた幹部達も、長州の計画に驚き耳を疑った。


「どうやら、長州は坂本達と手を組んだようですね。」


「どういうことだ、山南さん?」


「以前から坂本達は明らかな敵対行動をとっています。幕府を倒すにはそれなりに、強い力が必要。と、なれば幕府を動かすだけの強い藩を味方につけた方が、奴らには得ということです。幸いにも、薩摩の大久保も長州の高杉も、今の日本の在り方に疑念を抱いていますから、都合が良かったのでしょう。」


「なるほど、それで本軍が出る前に、奴らをこの京に来させたということか。」


「そういうことです。」


つまりは、過激派は長州の実験台として京に送られてきたということだ。


本軍の長州はまだ動かずにいる。おそらく過激派が倒れることになっても、長州は彼らを助けるつもりがないのだろう。


と、なれば後は過激派の象徴となる吉田率いる一味を捕らえるだけだ。


「古高が捕らえられ、奴らも警戒している。おそらく、まだこの京の何処かに潜んでいるはずだ。お前ら、何かこころあたりの場所はなかったか?」


「奴らが潜むとなれば、長州に協力的な【池田屋】、【四国屋】になります。」


斎藤がさらりと言う。だいたいの目星はついていたようだ。


「よし!そうと決まれば、作戦会議だ。それと、総司。」


「?」


「お前は後で奴を始末しておけ。いいな?」


「はい。」


幹部達は長州過激派を捕縛するために、作戦会議へと突入した。







それから数刻が経ち、月は一通りの仕事をし終え、夕飯の仕度に取り掛かるため勝手場へと向かっていた。


すると、ちょうど沖田の後ろ姿を見かける。


会議が終わり、一人で何処に行くのだろうかと気になり、月は後を追いかけることにした。


沖田は屯所を出て、裏手にある倉へと向かっていた。


そこは、あの古高が拷問に合って閉じ込められている場所だ。


長州の計画を吐いた今、沖田がその倉へ行く理由なんてないはずだ。


「!」


まさか……。


良くない考えが頭の中を過ぎる。


恐る恐る月は沖田が入って行った倉の中の様子を伺うと、



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