桜縁




このまま敵を目の前にして、見過ごすわけにはいかない。


近藤は覚悟を決める。


「突入するぞ!!」


後ろに控えている隊士の方を向き、戦いの命令を下した。



ーーバンッッ!!



大きな音を立てて、池田屋の扉が地面に叩き落とされる。


「会津中条殿お預かり新撰組である!!詮議のため宿内を改める!!」


近藤の名乗りを聞き付け、中にいた浪士達が次々と現れる。


「手向かいすれば全て斬り捨てる!!」


その言葉を合図にしてか浪士達が刀を抜き放ち、一勢に新撰組へと襲い掛かって来る。


ーーそして、


「斬れーーーー!!」


それを合図に、沖田を始めとした隊士達が池田屋へと飛び込んだ。






一方、本命でない四国屋では土方達が、手間取っていた。


だいぶ時間が経つというのに、浪士達は姿を見せず四国屋は闇に閉ざされていたのだ。


「連絡はまだか?」


「ああ。それにしても遅いな…、長州の奴ら。」


会合までにまだ時間があるのか、それとも本命は四国屋ではなく池田屋なのか、使いを走らせても、戻って来る気配もない。


「もう一度使いを走らせましょうか?」


斎藤がそう提案した時だった。


「伝令ーーー!!」


「!?」


「お前…!」


「月…!」


息を切らせながら羽織りを着込んだ月が到着する。


「はぁはぁ…!本命は『池田屋』!!」


「!!」


「なんだと!?」


「それは本当なのか!?」


「間違いありません!」


「……会津藩からの連絡はどうなった?」


「きていません!」


と、なれば近藤達の部隊が池田屋へ突入したはずだ。


本命が池田屋と分かった以上、ぼやぼやとしている暇はない。すぐに池田屋へ援軍に行かなければ。


「すぐに池田屋へ向かうぞ!!」


土方の指示の元、新撰組の総隊が池田屋へと向かう。


「お前来い!」


一度は沖田によって取下げられた命令であったが、今は月の力も必要だ。土方は月に言った。


「はい!」


池田屋には沖田もいる。


正直どんな顔をして会えばいいか分からなかったが、今はそんなことを考えている場合ではない。


予想していたことが現実になろうとしているのだ。


月は土方達の隊に同行し、池田屋へと急いだ。







池田屋は反撃する長州浪士達によって激しい激戦地化していた。


< 158 / 201 >

この作品をシェア

pagetop