桜縁
このまま敵を目の前にして、見過ごすわけにはいかない。
近藤は覚悟を決める。
「突入するぞ!!」
後ろに控えている隊士の方を向き、戦いの命令を下した。
ーーバンッッ!!
大きな音を立てて、池田屋の扉が地面に叩き落とされる。
「会津中条殿お預かり新撰組である!!詮議のため宿内を改める!!」
近藤の名乗りを聞き付け、中にいた浪士達が次々と現れる。
「手向かいすれば全て斬り捨てる!!」
その言葉を合図にしてか浪士達が刀を抜き放ち、一勢に新撰組へと襲い掛かって来る。
ーーそして、
「斬れーーーー!!」
それを合図に、沖田を始めとした隊士達が池田屋へと飛び込んだ。
一方、本命でない四国屋では土方達が、手間取っていた。
だいぶ時間が経つというのに、浪士達は姿を見せず四国屋は闇に閉ざされていたのだ。
「連絡はまだか?」
「ああ。それにしても遅いな…、長州の奴ら。」
会合までにまだ時間があるのか、それとも本命は四国屋ではなく池田屋なのか、使いを走らせても、戻って来る気配もない。
「もう一度使いを走らせましょうか?」
斎藤がそう提案した時だった。
「伝令ーーー!!」
「!?」
「お前…!」
「月…!」
息を切らせながら羽織りを着込んだ月が到着する。
「はぁはぁ…!本命は『池田屋』!!」
「!!」
「なんだと!?」
「それは本当なのか!?」
「間違いありません!」
「……会津藩からの連絡はどうなった?」
「きていません!」
と、なれば近藤達の部隊が池田屋へ突入したはずだ。
本命が池田屋と分かった以上、ぼやぼやとしている暇はない。すぐに池田屋へ援軍に行かなければ。
「すぐに池田屋へ向かうぞ!!」
土方の指示の元、新撰組の総隊が池田屋へと向かう。
「お前来い!」
一度は沖田によって取下げられた命令であったが、今は月の力も必要だ。土方は月に言った。
「はい!」
池田屋には沖田もいる。
正直どんな顔をして会えばいいか分からなかったが、今はそんなことを考えている場合ではない。
予想していたことが現実になろうとしているのだ。
月は土方達の隊に同行し、池田屋へと急いだ。
池田屋は反撃する長州浪士達によって激しい激戦地化していた。