桜縁
戦況は実力の差がありすぎるだけに、新撰組の優勢。
ここぞとばかりに、隊士達は刀で浪士達を屠って行く。
ーーザクッ!
ーーザシュッ!
斬り裂いていくたびに、血の飛沫が上がり、返り血で衣類を汚していく。
すでにこの場にいる隊士全員の羽織りが全身血まみれとなっていた。
沖田が浪士の刀を弾き、後方へと避ける。
「討ち入りに名乗りを上げちゃうなんて、近藤さんらしいよね!」
沖田は人を斬るのが楽しくて仕方がないという顔をして、ニヤリと笑う。
その背に身体を預けるように永倉が答える。
「良いんじゃねぇの?正々堂々と名乗りを上げる。それが討ち入りの定石ってもんじゃねぇの?」
とか言いながら、襲い掛かる浪士を斬り伏せる永倉。
久しぶりに思う存分に暴れることが出来て、しびれをきらしていた分、刀をおもいっきり振るう。
その側で平助が浪士達と斬り合いをしていた。
「討ち入りに定石…、」
ーーザンッ!
「そんなの、もっと強い奴相手に使うんじゃねぇのかよ?」
得意げに言う平助。
下にいる浪士達がだいたい片付いたところで、沖田と二階を占領しに向かう。
「相手はわずか二人だ!斬れ!斬れ!!」
下の戦いの様子を見ていた浪士達が、駆け上がろうとする沖田達を見て叫ぶ。
「……て、威勢が良いだけで、すっかり怯んじゃってるみたいだけど?」
余裕釈釈で沖田がニヤリと笑う。
「土方さん達が来る前に片付いちゃったりして!……へへ!」
大物捕りだというのに、戦いが楽しくて仕方がない二人。
「お先に!」
「あっ、きったねー!」
沖田に先を越され、慌てて二階へ駆け上がる平助。
下では浪士達に囲まれながら、近藤は土方達が来るのを待っていた。
「はぁはぁ…!」
ようやく土方達が池田屋へと到着する。すでに池田屋は戦場となっており、切り捨てられた浪士達の死体が、外にはみ出していた。
すぐに戦況を把握した土方が指示を出す。
「源さんは周りを固めてくれ。原田は裏手へと回れ。」
六番組と十番組がそれぞれに動き出す。
「土方さん!あれ!」
とある集団が月の目に入り、土方に知らせる。
いくつもの明かり点した一団。
どうやら会津藩の一団のようだ。
「今になって来やがって……!」
うっとうしいそうにぼやく土方。