桜縁




「斎藤!後は任せた!腰の重てぃ役人共には、新撰組副長直々に挨拶しとくからよ!!」


「承知、行くぞ!」


斎藤が三番組と他の組を引き連れ、池田屋へと飛び込んで行く。


「月!……頼んだぞ!」


土方はしっかりと月の顔を見て言った。


それは本来ここへ行く目的を確かめた言い方だった。


「はい!」


月は斎藤達に続いて池田屋へと飛び込んだ。







長州の過激派といるとされる長州の姫君、蛍。


かつては主として、沖田の婚約者として、共にいた女性だ。


何も知らなかったとはいえ、ある意味言えば彼女も、会津と長州の犠牲者であった。


沖田や新撰組との無駄な戦いを避けるためにも、蛍を生け捕りにしなければならない。


斎藤達と共に池田屋へ飛び込んだ月の目の前では、激戦が繰り広げられており、斎藤や他の隊士達が近藤達に加勢する。


「手向かい無用!抵抗する奴らは全て斬り伏せろ!」


「……やっと来たか!」


近藤や他の隊士達の間に安堵感が広がると共に、仲間の助太刀に力が湧いて来る。


斎藤は奥へと走ると、二階へ上がる階段を死守していた永倉と出くわす。



「へへへ…!おいしいとこは頂いたぜ?」


満足そう笑う永倉。


「ふん、今日の所は譲ってやる。」


どうやら今日の所は永倉いいとこ取りをされてしまったようだ。


そのまま片っ端から浪士達を片付けて行く。


「永倉さん!」


「月ちゃん!?何してんだ!女が容易く来ていい場所じゃねぇぞ!」


「沖田さんはこの上ですか!?」


「まさか…!お前行く気か!?」



ーードカッ!!



「!?」


上で物凄い物音が聞こえる。甲高い音を立てて金属がぶつかっている。


ぼやぼやとしている場合じゃない。


月は永倉が止めるが先に二階へと駆け上がる。


「待て!……あっ!」


「!」


突然、月の目の前に刀を持った浪士が待ち構えていた。


「危なーーい!!」



ーーーザンッ!!



ーーガラガラ!………ドサッ!!



月は抜いていた刀で、浪士を斬り、階段の下へと蹴落としていた。


唖然とする永倉。


月はそれに目もくれずに、奥へと向かった。


二階は下より荒れている様子はなかったが、すぐに戦場の場所を知る。


「平助君!!」


月の目の前に襖ごと壁に叩きつけられ、気を失っている平助を見つける。
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