桜縁
あっという間に囲まれてしまう月。
どうやら、追っ手の薩摩兵のようだ。人数も増えていることから、間者として潜入したらしい。
「やぁーーー!!」
一人の兵士が襲いかかってくる。
月は素早く刀を抜き、兵士を刺し殺す。
返り血が月の顔に付着する。辺りを警戒する月。
だが、もう一人が襲いかかり、それに続いて他の兵士達も、一勢に月に襲いかかる。
刀が激しくぶつかり合い、その場が戦場と化する。
しかし、女の月が大勢の男相手に、戦うのは無理がある。
「あっっ…!!」
バサッ、と音を立てて、敵の刀が月を肉体を引き裂いた。
その瞬間に血の飛沫が上がり、月は地面に倒れる。
「うっ、うっ………!」
月は逃げようとするが、身体が思うように動かず、はいつくばるようにして、後ろへ下がろうとする。
だが兵士は容赦なく、月ににじり寄る。
出血が止まらずに、血で大地を汚してゆく。
もう、殺されるしかないと思った時、ふと何かが月の手にあたる。
「……!」
沖田が月に護身用に…と、くれた笛だ。
さっき斬られた時に一緒に切れてしまい、地面に落ちてしまったのだ。
躊躇っている暇などない。
「やあーーーーっっ!!」
「!」
兵士が刀を振り上げた瞬間、月は力の有る限り、思いっきり笛を吹いた。
それと同時に、兵士達から血の飛沫が上がった。
「………!?」
どさり……と、兵士達が絶命していく。
そして、その間から、よく知る人物が現れる。
「……沖田さん!!」
そう叫ぶと同時に、沖田は今までに見たこともない目つきで月を見た。
「!」
その瞬間に、一気に血の気が引くのを感じる。
だが、その間にも沖田は次々と襲い掛かってくる兵士達を倒していった。
最後の一人を倒し、鈍い音と共に地面に、死体が落ちた。
返り血で真っ赤に染めた沖田が、全員の死を確認し、顔に着いた血を拭った。
月はただ呆然とそれを見ていた。
沖田が月に近づく。
「……大丈夫?」
「………!」
身体をビクリと震わせる月。目の前には返り血を浴び、血だらけの沖田がいる。
「月ちゃん?」
血のついた沖田の手が、月の腕に触れる。
「いやっ……!」
「!」
月は思わず沖田を突き飛ばしてしまう。驚く沖田。
「あっ……。」
我に帰る月。