もう猫になんか生まれない
「すごーい!!」
桜は今が一番良い時期で、花見客や並んだ屋台はピンク色に覆われていた。
クイは境内に足を踏み入れてそう言ったきり、驚きを通り越して呆然としたように上を見ている。
「はぐれるからな!絶対手ぇ離すなよ!絶対離すなよ!!」
とにかく凄まじい人手だった。
立ち並ぶ屋台が押しやられてしまいそうだ。
はぐれたらまずいからと、臨はクイの指に自分の指をしっかり絡めて歩き進めた。
「臨どこ行くのー!」
「本殿だよ本殿!とりあえず賽銭あげてこないと!」
人混みの出す音に消されないよう、声を張り上げながら二人は会話した。