もう猫になんか生まれない
「潰れるかと思った」
やや人の減った本殿付近、植え込みの縁石に腰掛けて、クイがふう、と息をついた。
桜は確かに素晴らしく、一通り見ることができたが、クイの感想を大袈裟だと笑えなくて、隣に座った臨もうんうんと頷いた。
「もうちょい遅くに来ても良かったな」
この神社は、様々な桜が揃っている事でも有名だ。
メイン参道周辺は桜の代表である染井吉野が占拠しているが、遅咲きの種類が植わっている参道もあるという。
「来年は遅くこよっか」
そーだな、と頷きかけて、臨はクイをまじまじと見た。
「お前っ、来年もいるつもり?」
半分拾ったような形で出合い、成り行きで同居しているが、クイのことを臨はあまり知らない。
そんな相手とさらに一年、というのは、少々無理がないか。
「……臨が思い出さなかったら、ね」
また、これか。