もう猫になんか生まれない
植え込みの奥に立つ桜の枝に、声の主は腰掛けていた。
最も、その姿はクイにさえ見えないのだけれど。
「あれほどわらわに大見得を切っておきながら、見つけるのに九年もかかるとはの。まこと、平気か?一年であの者がそなたを思い出すとは、わらわには到底思えぬのだが」
そこまで言って、彼女は嘲るように笑った。
「ま、一年など短い。――楽しみじゃのう」
「……うるさい……」
うつむいてしまったクイの言葉に、おおこわ、と彼女はふざけた。
「まあ良い。せいぜい愛想を尽かされぬようにな」
「余計なお世話だっ……」
呟きに、今度は返事はなかった。