もう猫になんか生まれない
「桜なんてみんな同じじゃないのか?」
「えー全然違うよ?」
ぶらぶらと、人がまばらになっている方へ進む。
バス通りの方角と言っても、木々が音を吸うせいか、静かだった。
「あ!あったー!」
しばらく歩くと、クイが嬉しそうに叫んで走り出した。
「――ああほんとだ、違うんだな……」
遠目にも、その桜が見知った桜とは違うのが分かった。
クイについて参道に足を踏み出すと、初めて見る桜の枝が、あるかなしかの風に吹かれて揺れた。
白く、ほんのり桃色を帯びた花の合間に、赤茶色の若葉が見える。
染井吉野のようなピンク一色でなく、若葉があるために、視界にめり張りがあるのだ。
「いっぱいある!綺麗だねー」
「これは……綺麗だな」
若葉というから、なんとなく黄緑を想像していた。
だがつややかな赤茶は、緑葉に負けず劣らずみずみずしい。
美しかった。