もう猫になんか生まれない



長い参道に人は数えるほどしかおらず、小柄なクイがはしゃいでいても変な目で見られることはない。



「あっ……難しいなあもう……」



時々落ちて来る花びらを捕まえようと、クイはさっきからやっきになっていた。


失敗しては悔しがる。


その姿は、奇妙なほど山桜の並木に溶け込んでいる。



また花びらをすくい損ねたらしい後ろ姿を見ながら、臨はぼんやり考えていた。



(クイはいくつなんだろう)



今年二十一になる自分よりは幼いはずだ。


言動も顔立ちも、自分より子供っぽい。


けれど彼は、時折びっくりするほど大人びた表情をすることがある。



――そしてそういう時は、大抵寂しげな顔をしている。



(クイは、俺を知ってた)




三ヶ月共にいて、自分はクイのことをほとんど知らない。



< 20 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop