もう猫になんか生まれない
長い参道に人は数えるほどしかおらず、小柄なクイがはしゃいでいても変な目で見られることはない。
「あっ……難しいなあもう……」
時々落ちて来る花びらを捕まえようと、クイはさっきからやっきになっていた。
失敗しては悔しがる。
その姿は、奇妙なほど山桜の並木に溶け込んでいる。
また花びらをすくい損ねたらしい後ろ姿を見ながら、臨はぼんやり考えていた。
(クイはいくつなんだろう)
今年二十一になる自分よりは幼いはずだ。
言動も顔立ちも、自分より子供っぽい。
けれど彼は、時折びっくりするほど大人びた表情をすることがある。
――そしてそういう時は、大抵寂しげな顔をしている。
(クイは、俺を知ってた)
三ヶ月共にいて、自分はクイのことをほとんど知らない。