裏切りの恋
10章 消せない想い
 
「あーあ、つまんないのー」


バイトの休憩中、控室でエミちゃんが嘆いた。


「つまんないって……」
「だって今日は城崎さん、いないんだもーん」


カフェオレに刺さったストローを吸いながら、文句を垂れるエミちゃん。

いくら控室にあたししかいないからって、ストレートに言い過ぎ。


「そんなこと言っても……城崎さんには彼女がいるの知ってるでしょ?」


この前、お店の前で香織さんが待ち伏せしていたのを、お店の誰かが見ていたみたいで、城崎さんは彼女持ちということはいっきに広まった。


「でもいつかチャンスは来るかもしれないじゃないですか!
 それにイケメンは、見ているだけで目の保養なんです!」


ずいと前のめりになって力説してくるエミちゃんに、あたしは苦笑するしかなかった。
 

 
(いつかチャンスは来るかもしれない)


そんな風に思えるエミちゃんはスゴいな……。

そのあとも休憩が終わるまで、ずっとエミちゃんの男話を聞いていた。
 
< 111 / 357 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop