裏切りの恋
10章 消せない想い
「あーあ、つまんないのー」
バイトの休憩中、控室でエミちゃんが嘆いた。
「つまんないって……」
「だって今日は城崎さん、いないんだもーん」
カフェオレに刺さったストローを吸いながら、文句を垂れるエミちゃん。
いくら控室にあたししかいないからって、ストレートに言い過ぎ。
「そんなこと言っても……城崎さんには彼女がいるの知ってるでしょ?」
この前、お店の前で香織さんが待ち伏せしていたのを、お店の誰かが見ていたみたいで、城崎さんは彼女持ちということはいっきに広まった。
「でもいつかチャンスは来るかもしれないじゃないですか!
それにイケメンは、見ているだけで目の保養なんです!」
ずいと前のめりになって力説してくるエミちゃんに、あたしは苦笑するしかなかった。
(いつかチャンスは来るかもしれない)
そんな風に思えるエミちゃんはスゴいな……。
そのあとも休憩が終わるまで、ずっとエミちゃんの男話を聞いていた。