裏切りの恋
 
城崎さんの顔を見るのが辛い。

嬉しいのに辛い……。


少しでも気をゆるませたら、本能のまま行動してしまいそうで……。


「夕菜ー、まだー?」

「あ、今行きます!」


入口の向こうから、先輩の声が聞こえた。
あたしは我に返って、城崎さんから段ボールを受け取ると、


「ありがとうございました!」


ぺこりとお辞儀をして、部屋を出た。




「頼むから、そんな顔しないでくれ……」



そうつぶやいた彼の声を聞かずに……。

 
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