裏切りの恋
 
明のマンションの前には、裕翔の車が停められていた。

あたしたちは無言のまま、車に乗り込む。


しばらく走ると、裕翔のほうが口を開いた。


「今はまだ、そっとしておくのが一番だ」

「……うん」


分かってる。

今、下手にあたしたちが慰めても、それは結局明をみじめな思いにさせてしまうだけだと。


だけどどうしても、あの傷ついた明の瞳が離れない。



「今日は家に帰せない。……いいか?」

「うん。あたしも今日は帰りたくない」


あたしはお母さんへメールを送ると、裕翔のマンションへと帰った。
 
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