裏切りの恋
「裕翔……?」
部屋に入るなり、後ろから抱きしめてくる裕翔。
あたしは不思議に思って、顔だけ振り返った。
「よかった……手遅れにならなくて……」
「…うん……。裕翔のおかげだよ」
明に強引に抱かれそうになったけど、間一髪のところで裕翔が助けに来てくれた。
ほんと、ヒーローみたいだよ。
「明に話に行くって言ってたから、もしものことがあったらと思ってな……。
仕事切り上げて来ちまった……」
「そっか…。ありがとう」
あたしは抱きしめる裕翔の腕に、自分の手を重ねた。
「……って、全然大丈夫じゃなかったな」
「え?」
重ねられた手を見て、裕翔は切なそうにあたしの手首を撫でた。
そこには、明に押さえつけられたときについたであろう痣が……。