裏切りの恋
「あき…ら……」
病室には、酸素マスクをし、横になっている明の姿。
手足には痛々しい傷が残っていて、目は深く閉ざされている。
「杉沢夕菜さん…ですか?」
明の前に立ち尽くしていると、後ろから看護士さんが声をかけた。
「あ、はいっ」
「ちょっと……」
あたしは言われるがままに、看護士さんのあとについていった。
別室に案内されると、看護士さんの隣に先生もいた。
あたしはお辞儀をすると、促された椅子に座った。
「桐谷さんのことですが、とくに命に別状はありません。
幸いにも、骨折等もしてませんし、全治1ヶ月程度です。
退院も1週間ほどでできるでしょう」
「…よかったっ……」
心の底から、ほっとした。
明にもしものことがあったら………。
だけど先生は、曇ったままの表情だった。
「ちょっと気になることがありまして……」
「え?」
それを聞いて、あたしはドクンと心臓が波打った。