裏切りの恋
この人は、いつからこんなに弱々しく笑うようになったんだろう。
伸ばしてきた手を、あたしはとらずにはいられなかった。
「明……」
「……いてて」
明は自ら酸素マスクを外すと、ゆっくりと起き上がった。
「大丈夫なの?」
「ああ。見た目ほど、ひどくない。
それよりも……」
「あ……」
明はあたしを抱き寄せた。
「こっちのほうが十分元気になれる」
事故で怪我している明を、あたしには跳ね除けることは出来なかった。