裏切りの恋
「明……聞きたいことがあるの……」
「聞きたいこと?」
あたしは明から離れると、きょとんとした顔の明を見上げた。
さっき言われた先生の言葉が気になって仕方がない。
(桐谷さんの事故のことなのですが……)
「杉沢さーん。面会時間、そろそろ終わり……あ、桐谷さん!目を覚ましましたか!?」
次の言葉を発しようと口を開いたとき、看護士さんが病室に入ってきた。
「今、先生呼びますね!」
バタバタとかけていく看護士さん。
その様子だと、すぐに戻ってくるだろう。
あたしはとてもじゃないけど、さっきの話をする雰囲気じゃないと思い、話すことを諦めた。
「ごめん。また今度話すね。今日は帰らなくちゃ」
「……そっか…」
明は、あからさまに寂しそうな顔をしていた。