裏切りの恋
「どうぞ」
次の日、あたしはお昼過ぎ頃に病院へ行った。
ドアをノックすると、部屋の中からは女の人の声。
扉を開けると、そこには……
「夕菜ちゃん!」
「おばさんっ……おじさんも…」
明の両親がいた。
「昨日は迷惑かけたみたいでごめんなさいね。
今朝、私たちもこっちに着いて……」
「あ、いえ!全然大丈夫です」
明の実家は九州のほうで、昨日連絡した時は仕事のせいか繋がらず、留守電に一報を入れておいた。
そして気が付いたときには新幹線がなく、朝一でこっちに来たらしい。
あたしは一度だけ、紹介してもらうために二人に会ったことがあった。
「まったくこの子はもう……心配かけて……」
「……ごめん」
たぶん、何度もこのやり取りはあったんだろう。
明は頭があがらない、と言ったように謝っていた。