裏切りの恋
 
「……あのね、どうしても聞きたいことがあるの……」


あたしは膝の上でぎゅっと手のひらを握ると、明を見つめた。


「事故のこと……なんだけど……」

「……ああ…」


明は、あたしが言いたいことが分かったようで、一度間を開けると言葉を発した。


「……飛び出した……わざと…」


それは、当たってほしくない答えだった。


「このことも聞いたんだろ?」


そう言って、明はおもむろに袖をまくる。

見せた手首には……


「あ……」


まだ少し、生々しい傷跡が残っていた。
 
< 198 / 357 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop