裏切りの恋

「なん……で……」


自ら命を絶とうとする明に、体がふるふると震えた。

怒りではなく、悲しさで……。
だけどそんなあたしに、明は静かに言葉を吐く。


「なんで?……よくお前がそんなこと言えるよな……」


それはナイフのような、鋭い言葉だった。


「俺にはお前がすべてだったのに……。
 兄貴に好きなやつ奪われて、もう恋なんかしないって決めてたのに、そのネジを外したのはお前だろ?
 それなのに……」


くしゃっと前髪をかき分ける。

明の顔は、苦しげで、切なげで……


「どうして俺を捨てたりしたんだよ!!」


今さら思い知らされる。

自分が犯した罪を……。

 
< 199 / 357 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop