裏切りの恋

部屋の中には、コーヒーのいい匂い。

あたしはこの匂いが好き。
お酒よりも、コーヒーや紅茶を飲んでるときのほうが落ち着く。


「はい」
「ありがとう」


渡されたコーヒーは、あらかじめ砂糖とたっぷりのミルクが入れられて、あたしの大好きな味だった。


明は何でも知ってる。

あたしの好きな味。好きな場所。好きなテレビ番組。

そしてあたしも知ってる。

明の全部……。


それくらいずっと一緒にいて
たくさんのものを共有してきたのに

どうしてあたしは、道を踏み外してしまったんだろう……。



「……そんな顔しないでよ」



明は少し困ったような顔で、あたしの頭を撫でた。
 
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