裏切りの恋
「明……」
あたしは抱き返すことなく、明の名前を呼ぶ。
「あたし、明のこと嫌いじゃないよ。
むしろ大好きなままだよ」
明への気持ちなんて、消えたことない。
ずっとずっと積み重なっている想い。
「……だけど…」
「いい。言うな」
明はあたしの言葉を制す。
次の言葉も、あたしの本心も分かってる。
「絶対に後悔させない。
あいつになんか……負けない」
大切な人が二人いる。
一人はあたしがいないと生きていけない人で
一人はあたしがいなくても生きていける人。
あたしはただ
自分の周りから、誰かがいなくなるのが嫌なだけだったんだ。