裏切りの恋
「そうなんだ……」
何も知らないエミちゃんの手前、顔に出すわけにもいかない。
あたしはなるべく平常心を保って、受け答えをした。
「まーったく、夕菜先輩は相変わらず反応薄いなー。
そりゃ、夕菜先輩には婚約者がいるから仕方ないですけどー」
「そういうわけじゃ……」
少し酔いが回っているせいか、愚痴交じりに話を続けるエミちゃん。
あたしは苦笑しながら、彼女の話を聞いていた。
「それじゃあ、エミちゃん、チャンスじゃないの?」
「それがぁ!」
待ってました!と言わんばかりに、エミちゃんは声を荒げた。
正直ちょっと恥ずかしい…。
「実は、一昨日、アリサ先輩が城崎さんに告ったらしいんですよ!」
「え……?」
「そしたら……」
もったいぶるように、一息入れるエミちゃん。
そして次に出た言葉は……
「城崎さん、好きな人がいる、って断ったみたいですよ」
それは、涙が溢れ出そうな言葉だった。