裏切りの恋

何も答えないでいる裕翔に、明は言葉を続けた。


「ヒロのところへ行くんだったら、俺は命を絶つ。
 って、夕菜に言っていたからだよ」

「……どういう…ことだ…?」

「そのまんま」


そう言うと、明は袖をまくって、手首を見せた。
そこにはほぼ治ってはいるけど、うっすらと傷跡が残っている。
裕翔はその傷を見て、驚いていた。


「自分でやった。夕菜が俺のもとからいなくなると聞いて。
 この間の事故も、事故なんかじゃない。自分で飛び出したんだ」

「なっ……」

「夕菜は優しいから……。
 だから俺の命を守るために、一生傍にいるって約束してくれたよ」

「お前……」

「だけど今回ので全部パー。
 ヒロが夕菜を連れて行くって言うんなら、俺を見捨てるって思っててよ」



明は卑怯だ。

そんなふうに言って、友達を傷つけて……。


あたしだけならいい。
だけど大切な友達を……
 
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