裏切りの恋
 
思わずつぶってしまった目を、おそるおそる開けた。

そこに映ったのは、裕翔を殴った明ではなく……


「……っく…」


壁を思い切り殴った明だった。


「あき…ら……」

「なんでだよっ……」


見ると、明の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。
裕翔も驚いたように見上げている。


「悪い、って…。俺も夕菜のこと好きになった、って……。
 一言言ってくれなきゃ……

 俺はお前を許すことも出来ねぇよっ……」


「明……」


ようやく分かった。

自分たちが間違っていたこと……。


明が一番言いたかったこと。


あたしたちは、明を傷つけたくないと言いながら
本当は自分たちを守っていただけだったんだ……。
 
< 269 / 357 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop