裏切りの恋
 
裕翔は倒れかかっていた体をゆっくり起き上がらせると、血の出た唇を拭う。


「そうだな…。
俺は肝心なことをお前に言ってなかった…」


そして明を見上げた。


「明……。
 俺、夕菜を好きになった。
 だから悪い……。お前から奪っちまう」

「……う…るせぇっ!」


明はもう一度裕翔を殴った。


「おっせーんだよ!言われてから言いやがって……。
 しかも当たり前のように、奪うって言ってんじゃねぇよ!」

「……悪い…。本当に俺はバカだな…」

「ああ、かなりの大馬鹿野郎だ!」


怒鳴り散らしていた明だけど、その顔はどこか笑っているようだった。

そんな明に、裕翔も泣きそうな微笑みを向けた。


「夕菜……」


明はあたしのほうへ振り返る。


「ごめんな。ずっと縛りつけて……」


そう言って、悲しく微笑んだ。
 
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