裏切りの恋
「あの時は……本当に死にたかった…。
夕菜がいなくなって……しかも夕菜を奪った相手が親友で……。
もう何もかもがどうでもよくなったんだ……」
明は今まで思っていたことを、ぽつりぽつりと話し出した。
あたしと裕翔は、明の言葉に耳を傾けた。
「だけど、事故で病院運ばれたとき、夕菜が来てくれて……。
本当に嬉しくて……夕菜がいれば、もう何もいらないって思った。
どうやってでも、夕菜を自分の傍に置いておきたかった。
だからあんな卑怯な言葉を……」
(夕菜が見張っていてくれないと、俺はいつ、命を絶とうとするか分かんないよ)
「そんな言葉で夕菜を縛って、俺の傍にいてくれたけど……
俺の隣にいる夕菜はいつも空っぽだった。
笑ってるのに笑っていなくて……いつも俺の顔色を窺われているような気がして……
そうじゃない。俺が好きになった夕菜は、そんな夕菜じゃないんだよ」
明は笑った。
とても複雑そうな笑顔で……。
「俺は昔のような、心から笑った顔の夕菜が見たいんだ。
そして今そんな夕菜を引き出せるのは俺じゃない。
………ヒロなんだ……」