裏切りの恋

「それじゃあ…ね」


背中を向けている明に、最後の挨拶を交わす。

明は振り向かない。

あたしたちは仕方なしに、玄関へと向かった。


部屋を出る瞬間、明が言葉を発した。



「お前は俺の一番の親友だよ。一生」


驚いて振り返る。
裕翔も同じように明を見ていた。


明は相変わらず背中を向けていて、あたしたちを見ない。
だけどその理由が分かった。


明の足もとに落ちる、数滴のしずく……。


「夕菜は……俺の親友の彼女。
 だから俺にとっても大事な子だよ」

「あき…らっ……」


せっかく止まったはずの涙が、再び零れ落ちた。



明は……


あたしたちにとって、一番守りたい人だ。


 
< 274 / 357 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop