裏切りの恋
 
「そろそろ出るか」
「あ、うんっ」


時間は8時半前。
裕翔の出勤に合わせて、あたしも一緒に家を出る。


「そうだ。……ほら」
「え?……あ…」


裕翔はあたしに何かを差し出す。
その手に握られていたのは……


「今度は返すなよ」


この部屋の、合鍵だった。


「……うんっ」


一度返したはずの鍵。
別れの手紙と一緒に……。


あたしはそれを大事に受け取ると、キーケースにくくりつけた。


「ありがと!」


チャリッと、自分の家と裕翔の家の鍵が重なり合った。
 
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