裏切りの恋
入ったお店は、少し古い感じの喫茶店。
お店の中全体に、コーヒーのいい香りがした。
「いいところでしょ。
ここ、朝早くやってるから、たまに仕事行く前に裕翔と一緒に一杯飲んでいったりしたんだよ」
「そう…なんですか……」
明るく話す香織さん。
この様子だと、たぶん知らない。
今のあたしと裕翔の関係を……。
「でもまいったなー…。裕翔、職場の人にまで言っちゃってたんだ…」
そう話しながら、切なげな表情をする香織さん。
今あたしは、香織さんに正直に話すべきなのだろうか……。
「ねえ、夕菜ちゃん。
夕菜ちゃんは、明君と付き合う前、誰かと付き合ってた?」
「え?あ、……はい…」
突然投げられた質問。
あたしは意図が分からず、正直に答えた。
「そっか……。
あたしね。裕翔しか知らないの」
それは、あたしが聞きたくない話だった。