裏切りの恋

「中学1年の時、同じクラスになって……あたしからの完全片想いをして…。
 裕翔が事故で両親を亡くしたって聞いてから、ずっと励まし続けた。
 そして1年かけて、ようやく裕翔があたしを見てくれるようになって……」


そう話す香織さんは、少し泣きそうだった。
あたしは複雑な気持ちで、彼女の話を聞く。


「それからもずっと、裕翔だけ。
 裕翔はあたしの運命の人だから……。
 だから裕翔以外の男の人を知ろうとも思わなかったし、この先もずっと裕翔だけなの」


顔を赤らめて、
まるで今も裕翔は自分のもの、と言うような目をする香織さん。


やめて…
そんな顔して、裕翔の話をしないで……。


「ねえ、見て。夕菜ちゃん。
 あたしずっと持ち歩いているものがあるんだ」


香織さんは、鞄の中から一つのポケットアルバムを取り出す。

そして開いて見せてきたものは……


「可愛いでしょ。
 中学生だった頃の裕翔」


あたしの知らない、裕翔だった。
 
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