裏切りの恋
「あ、ごめんなさいっ……」
グラスを落としたのはあたし。
一瞬、店内にいる人みんながこっちを見て、店員さんが駆け寄る。
「お怪我はありませんか?」
「あ、はい……。すみません……」
「いえ。片付けますね」
店員さんがあたしたちの足もとで割れたガラスを集める。
それもあって、香織さんはアルバムを閉じた。
「なんて、こんなもの見せられても、夕菜ちゃん困っちゃうよね」
「あ、いえ……」
香織さんはうっすら笑うと、アルバムを閉じて鞄にしまった。
「あたしね。今でも裕翔のことが好きなの。
たぶんこの先も……一生……」
店員さんが片付け終わると同時に、香織さんは再び言葉を発する。
だけどその目はもう、笑っていなかった。
「だけど分かっちゃって……。
裕翔、あたし以外に好きな人が出来ちゃったんだよ」
ドクン…と、心臓が飛び跳ねた瞬間だった。