裏切りの恋
22章 痛み
その日から、なんとなく一人で出歩くのが怖くなった。
(絶対に許さない。
あたしから裕翔を奪った人……。
……絶対に……)
あの時言った香織さんの顔と声が頭から離れない。
美人な人ほど怒ると怖いとはよく言ったもの。
香織さんはまさにその言葉が当てはまり、あたしを恐怖に陥れるには十分だった。
(人のものを奪ったら、必ず罰がくるってことを)
罰とは、いったい何のことなのだろうか……。
ピリリリ…
静かな部屋で、携帯が鳴った。
あたしは一瞬ビクッとしてしまい、慌てて携帯を手に取る。
だけどディスプレイに表示されている名前を見て、いっきにほっとした。