裏切りの恋
 
「偶然だね。また会って」


手を強く掴んだまま、言葉を交わす香織さん。
あたしは恐怖で、声が出なかった。


「そんなにオシャレしてデート?相手はもちろん明くん?」

「……」


「まさか……裕翔じゃないよね?」

「いっ……」


ギリッと手の力が強まった。
だけど、香織さんは笑顔のままだ。


「どうして何も言わないの?
 ……そっかぁ……図星なんだあ……」

「……」



「裕翔の好きな人って、夕菜ちゃんだったんだね」



もう、そこには笑顔はなかった。
 
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