裏切りの恋
 
「は…なして……」

「離す?いいよ。だけど……」

「…っ」


ガクンと片足が落ちた。
というよりは落とされた。
だけど、手はまだ掴まれたままで、あたしの体は落ちずに済んでいた。


「離すときは、思い切き突き放しちゃうかも」


言われて気が付く。

あたしのすぐ後ろは、もう階段。
ちょっとでも押されれば、あたしは真っ逆さまに落ちてしまうだろう。


ここの階段は長い。
一度踏み外したら、最後まで落ちるのは見て分かる。



「ねえ、夕菜ちゃん……。
 どうやって、裕翔のことをたぶらかしたの?」


再びニコッと笑いかける香織さん。

その笑顔のせいで、通行人もまさかこの人があたしを落とそうと思っているなんて思わない。

何も言えずにいると、香織さんは言葉を続けた。

 
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