裏切りの恋
 
「10年…10年だよ?あたしと裕翔には10年以上もの想いが詰まってるの。
 あたしと裕翔は、お互いのことしか知らないの。
 それなのにどうやって……どうやって彼の心を奪ったのよ!?」


香織さんの瞳からは、ポロポロと涙がこぼれていた。

その涙を見て、ようやく自分に罪悪感が込み上げてくる。


「人のものを奪ったら、罰がくだるって言ったでしょ。
 ちゃんとその罰、受けないと……ダメだよ……」


彼女はなおも微笑み続ける。
だけどもうそこに、怖いという感情はなかった。


そう…

だって悪いのはあたし……。


「か…おりさん……」


あたしはようやく言葉を発した。
香織さんは意外なあたしの言葉に、一瞬ビクッとして顔をあげた。


「ごめん…なさいっ……」


あたしが泣いてしまうのはおかしい。
だから涙を堪えて、香織さんを見返した。
 
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