裏切りの恋
 
先生はさらに一通り説明すると、病室を出て行き、
後から遅れてきた明には、お父さんが説明していた。

そして気を遣ってか、お父さんとお母さんは病室をいったん出た。
気が付くと、彼の姿もいなくなっている。


病室には、あたしと明だけで、明はベッドの横のパイプ椅子に座った。


「怪我…痛まないか?」
「……うん。幸いにも…骨折はしてないから……」


不幸中の幸い。
あたしは歩道橋の階段の一番上から落ちたらしいが、頭は打ったものの骨折はしていなかった。

ただ、打撲と捻挫はところどころあって、多少痛む。


「……明…」


あたしは、俯きながらシーツをぎゅっと握った。


「あたしたち……今、本当に付き合ってないんだよね……」


明はしばらく間を開けた後……


「……ああ」


と、静かに頷いた。
 
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