裏切りの恋
「夕菜の気持ちなんか、最初から分かってたよ。
夕菜が俺を好きだったのは、半年前まで。
たとえ記憶がなくなってても、体はちゃんと覚えてるから……。
ヒロのことが好きって」
「……っ」
「だから同じこと繰り返すから、って言ってんのによー。
夕菜は妙なところで臆病だから……」
明はあたしの前にしゃがみ込むと、曖昧な笑みを向けた。
「もう逃げんな。
記憶がなくたっていいじゃん。自分の正直な気持ち受け入れればよ。
じゃねぇと……本当に俺、いつまでもお前のこと、吹っ切れねぇから」
「明……」
それはとても泣きたくなるような笑顔だった。
きっとあたしは、この人に何度もそんな笑顔にさせてたんだろう。
城崎さんを選んで、明は必死に自分の気持ちを抑えて背中を押して……。
辛い思いをたくさんさせたのに、またもう一度させて……。
「ご…めんなさい……。ごめんなさいっ……」
「だーかーらー。もう謝るのはナシ!!
これ以上フラれたくねぇっつーの」
「いたっ…」
明はあたしのおでこに、デコピンをした。
そしてニッと笑うと、立ち上がって城崎さんを見る。