裏切りの恋
 
「だって裕翔が悪いんじゃんっ…」
「なんでだよ」
「裕翔が……香織さんと車に乗ってたから……」


そうだ…。
あたしはそれを見て、自分の気持ちから逃げるように明に甘えたんだ。


「香織と車?……ああ」


裕翔は、一瞬頭を悩ませ、思い出したかのように言う。


「ちゃんと別れてきたんだよ。
 お前が記憶なくして、香織が再度俺に告白してきたから……。
 でも無理だ、って話をつけて、あれは最後に送っていっただけ」

「そうだったの?」


それを聞いて、ようやく心にかかっていた靄が晴れた気がした。


「香織もそのあと、やっぱりお前には勝てない、って言ってたよ」
「……そっか…」


記憶を失っている間、一度だけ香織さんと会って話した。



(命を懸けるくらい好きなら、忘れんじゃないわよ!)



あの言葉、効いたなぁ…。

あたしも香織さんに、感謝しないといけない。
 
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