ビター味の初恋の行方
お互いに無言のままの、車内。突然、翔平がこちらを向き、何かの包みを渡された。

「あげる」
「えっ?」

よく見ると、一口サイズのビターチョコ。食べると、ほろ苦い味が口の中に広がった。それをきっかけに、私達はこの10年間の空白を埋めるかのように、沢山お喋りをした。

変わらない笑顔。変わらない仕草。変わらない声。翔平と目が合うたび、胸が高鳴る。そして……。と、その時。ふいに、翔平に左手を握られた。え、しょ、翔平!?

「ほんとは……、俺もユミのこと、ずっと好きだった」

「え……?」

「けど、友達やクラスのヤツらに、冷やかされるのが恥ずかしくて。傷付けて、ごめん」

気が付いてしまった、変わらない想い。熱くなった右手をぎゅっと握り返すと、翔平が耳元で囁いた。

「もう少し……、一緒にいない?」
「……うん。いいよ」

重なった唇は、甘くほろ苦い、ビターチョコの味がした。

END.
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