抹茶モンブラン
 コンコンと部屋がノックされて、エプロンを外した高田さんが暗い部屋にそっと入って来た。

「……乙川さん?目が覚めたんですか?」
「あ、はい。すみません、起き上がろうとしたら頭が痛くて……」
「無理しなくていいですよ。もう客は帰って、片付けも済んだんで、体調が戻るまでゆっくり休んでいってください。僕はあっちのソファに寝るんで、ゆっくり朝まで寝てください」

 自分用の枕とタオルケットを持って、そのまま部屋を出ようとした高田さんをおもわず引き止めた。

「あの、すごく申し訳ないんですけど……部屋の電気つけて寝ていいですか」

 真っ暗な部屋に取り残されるのが怖くなって、私はそんな事を言った。
 可能なら今からでも帰りたかったけど、自力で歩いて帰るには体がフラフラだった。
 せめて部屋に電気をつけた状態で起きてるしかないなっていう感じだ。

「暗いの苦手ですか?」
「この時間に目が覚めちゃうと、そこから先の睡眠が浅くなってしまうんですよ。暗所
恐怖症で……、本当に情けないんですけど」

 私がしきりに自分の駄目さを説明していたら、高田さんがそっとベッドサイドまで近付いて来て、軽く私の手首をつかんで脈をとっていた。

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