抹茶モンブラン
「こんな事言いたくないですけど、堤さんが乙川さんを安心させてあげられていないなら、僕はそれなりにあなたへのアプローチは続けるつもりです」
「え……」

 めずらしく強引な彼の言葉に驚くばかりだ。

「恋愛はフリーなのが特権ですからね……僕にまるっきり魅力が無いのなら仕方ないですけど」

 優しさの中にも強い芯を持った瞳を私に向けて、彼はそう言った。
 繊細な光一さんとは対称に、高田さんは見かけも内面も簡単には崩れない強いものを持っている。

 私が何も答えないでいると、彼はそのまま「おやすみなさい」と言って、部屋の明かりをつけたまま出て行った。

「……」

 光一さんが居ない間に何だか妙な展開になってしまった。

 高田さんへの信頼感は結構大きくなっていて、恋愛感情とは言えないんだけど、この人と一緒なら不安を抱かずに暮らせそうだなという漠然とした印象があった。
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